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留学記:The Université Grenoble Alpes

2018年07月23日NEWS

つづけて留学記をお送りします。世界教養学科の専攻語は英語ですが、英語圏以外の地域に留学する学生もいます。以前、メキシコのグアダラハラ自治大学に2016年秋から留学した菅野蓮くんの留学記を掲載しましたが、今回、フランスのグルノーブル・アルプ大学(The Université Grenoble Alpes)に留学した宮川知之くんの留学記をお届けします。

宮川くんの留学を短い言葉で言い表すとすると、「果敢な挑戦」となると思います。もちろん、「挑戦」には、多かれ少なかれ、失敗が伴われます。しかし、失敗を恐れて挑戦しなければ、得るものは小さくなってしまいます。宮川くんの留学記は、挑戦することの大事さ、失敗から学ぶことの大事さを教えてくれています。


留学記
―The Université Grenoble Alpes

フランス、グルノーブルに留学

私は、2016年9月から翌年の5月中旬まで、大学の留学支援制度を利用してグルノーブル・アルプ大学へ行きました。私の学科の専攻言語は英語です。そのため、よく周りの人からは、なぜわざわざ非英語圏の国へ行くのかと尋ねられることがありました。私も最初はフランスの大学で授業を受けることなど想像していませんでした。しかし、学校側から提携先大学のリストをもらった時に、偶然、英語の試験資格だけで留学できる大学がフランスにもあったので気になりました。また、フランスでの移民問題、難民問題がメディアで取り上げられていて興味を持っていたので、現状を実際に確認したいという思いがあり、最終的にグルノーブル・アルプ大学を選びました。

私が留学したグルノーブル・アルプ大学は、キャンパスの規模がとても大きく、どこからどこまでが大学の敷地なのかも分からないほどの広大なキャンパスに、いくつかの大学や研究施設があります。私は、その中でも、主に外国の歴史、文学や言語が学べるスタンダール大学と、政治学を専門としたグランゼコール(社会科学系専門職業人養成学校)の1つであるグルノーブル政治学院(シアンス・ポ・グルノーブル:Science Po Grenoble)で学びました。

スタンダール大学での学習

前期の学部授業は、英米の文学、英語圏(イギリス、アメリカ)の歴史や文化がメインで、他に留学生向けに用意されたフランス語で行われるコースも取りました。留学生用に組まれたフランス語のクラスではフランス語文法を学び、その中でも語法など教科書に書かれているような基本的なことだけでなく、歴史的背景を含め今日使われているフランス語がどのように発展してきたのかも学びました。そこで興味深かったのは、フランス語や英語を含め、その他ヨーロッパ諸国で使われている言語にはそれぞれ単語や文法のルールに共通している点があったりして、同じクラスに参加していたヨーロッパ圏からの留学生からそういった情報を聞けたことです。

後期には、カナダとアイルランドに学習対象地域が変わり、それらの国の文化や歴史(少し現在の政治分野を含む)を学びました。フランス語での授業は、文法のクラスを引き続き受講したのに加え、現代フランスで起きている社会問題を留学生それぞれの出身国の事例と比較しあって議論したり、発表したりするクラスも新たに取りました。そこで私は環境問題を担当し、調べてペアの中国からの学生と協力して、今まで経験したことのない、1時間に及ぶ長く本格的な発表を行いました。

政治学院での授業への挑戦

政治学院では、履修登録時に、多文化主義についてのクラスと、「アメリカ企業―その誕生と発展、覇権を握るまで (The American firm: its birth, its growth and its rise to hegemony)」という、アメリカの会社がどのように成長していったのかについて学ぶ授業(主にマーケティング分野の内容)を選択して受けました。

前者の多文化主義のクラスは、専門的な知識を持っていない学生や英語が母国語でない人を考慮して担当の先生が分かりやすく丁寧に説明してくださったので何とか授業についていくことができました。内容はフランスに焦点を当て、時には世界各国のデータと比較してり、フランスに多くの移民が住み移るようになったきっかけを辿る歴史や、現在導入されている福祉制度や教育制度、また、今後の政策を考えるなどしてフランス社会の多様化の理解を深めました。後者のアメリカ企業のクラスの方は、内容が専門的で、英語圏からの学生が多い授業の雰囲気にもついていけず、以前にその分野を学習した経験のなかった私は場違いなように感じて途中で挫折してしまいました。結果的に、前期の成績は、あまり芳しくありませんでした。その原因は、言語的な面よりも、専門分野の知識が自分に足りていなかったことにあると反省しました。

異なる試験形式への対策

フランスの大学の試験形式が日本で今までやってきたものとは異なり、絵や文献を確認して、自分の持っている知識とその文献に書かれている情報をうまく結びつけて、与えられたテーマに沿った答えを論述するものが多いことに気がつきました。その上、答えはボールペンで記入するので、シャープペンシルで書いた時のように消せません。試験では、色のついた下書き用の用紙が提供され、清書する前に何か思いついたアイデアや文章構成などを書き込めるようになっています。そうしたテスト形式に対応する必要があると気づかされました。

前期の経験から得た反省もあり、後期には取った授業の大半の単位を何とか得ることができました。その改善の鍵は、試験直前に試験対策をするのではなく、学期中に習慣的に対策したことが一番大きい要素だったと思います。たとえば、重要な事柄や歴史の流れなどを思い出せるようにもう一度ノートにまとめ直したり、また、それを試験ではまとまった文章で説明しなければならないため、どういった表現が有効に使えるのかを自分なりに本やネットの記事を参考にして覚えたりしました。それに加えて、クラスの友達に積極的に助けを求め、協同してクラスに参加したことで、後期は納得のいく結果に繋がったと感じました。

大学以外の生活

フランスに滞在していて一番楽しかったのは、現地で多くの国の人々に出会い交流したことです。グルノーブル・アルプ大学は大勢の留学生を受け入れているため、学校でも、キャンパス内にある自分が住んでいた寮でも、フランスの学生だけでなく、いろんな国から来た人と会って話すことができました。自分がいた寮は一人部屋ですが、同じ階の人と共有して使うキッチンはたくさんの友達を作るのに最適な場所でした。また、一緒にご飯を食べたり、パーティーをしたりと、楽しい時を共にすることもできました。楽しい時間がある一方で、学校での授業についていくのが大変で正直落ち込んでいた時や単位のことで心配していた時などもありました。しかし、励ましてくれたり、相談に乗ってくれたりする友達がいつも周りにいたので、何とか困難な時も乗り越えることができたと思います。その時、自分はとても恵まれた環境にいると強く感じました。

チェコへ旅行

休暇中は、フランス国内に限らず、隣接した国などヨーロッパ諸国にも旅行しました。その中でも特に思い出深い国がチェコです。チェコへは冬のちょうどクリスマス休暇に行きました。入寮してしばらくした時、同じ階に住んでいたチェコからの留学生と知り合い、仲良くなりました。ある時、互いの出身国のことで話が盛り上がり、私が彼にいつかそこ(彼の故郷)に行ってみたいというようなことを伝えました。冬の休暇に入るころ、彼がチェコの実家に帰ってクリスマスを祝うから、もしよければ一緒に来ないかと誘ってくれました。

迷わずその誘いに乗り、チェコのオロモウツ(Olomouc)という街から少し離れた彼の住む小さな村に行って、彼の家族や祖父母、親戚の方々とクリスマスを一緒に過ごしました。もちろん、私はチェコ語は全く話せないのですが、寮で彼と友達になった時から少しチェコ語を覚えて話しかけたりしていたので、その知っている表現を使ってみたり、ウェブページの翻訳機能を使ったりしました。お互いの意思疎通ができた時には、言葉の便利さや新しい言葉を学ぶ楽しみに改めて気づくことができました。また、クリスマスに教会に連れて行ってもらい、その村の人々と会って挨拶をしたり、賛美歌を歌っているのを聞いたりと、キリスト教文化に触れることができ、日本にいては経験できない貴重な経験を積むことができたと感動しました。

最後に

振り返って思うのは、自分の留学経験はこれからの将来に向けて、本当に価値のあるものだったということです。確かに、学部の授業には現地の学生のようについていくことは出来ず、失敗したり、時には留学先をフランスにしたことを悔やんだりするときもありました。しかし、それは実際に来て経験しないとわからないことだし、逆に、その失敗が今に生きることが多いと帰国してから感じました。たとえば、留学先の授業で習った歴史や文学作品に関係する内容を、日本の大学の授業で聞いた時や、本を読んでいて偶然見つけた時には、留学を経験する前以上に興味が掻き立てられたり、もう一度、当時分からなかったことや忘れかけていることを復習しようという意識になったりと、自発的に勉強する良いきっかけに繋がったと思います。

また、留学の利点は、今まで習ってきた語学を実践に生かして挑戦できるのはもちろん、世界各国から集まってきた同じような境遇で勉強している学生と交流したり、意見を交わしたりすることが可能だということです。そのためにも、ただ語学を学ぶのではなく知識を習得したり、積極的に話しかけたりと、何か行動を起こす必要があると思いました。


グルノーブル、バスティーユ城塞。週末に何度か登りました。徒歩でも、ケーブルカーでも楽しめます。山頂にはこの街の歴史を学べる博物館もあります。

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大学の寮のから少し街の方へ移動ところにある大きな公園。フランスの公園には老若男女問わず多くの人がいて、スポーツをしたり、おしゃべりしたりと、くつろいだ雰囲気がとても印象的でした。また、緑が生い茂っていて落ち着きます。

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チェコで友達やその家族、親戚の方とクリスマスを祝いました。キリスト教を信仰する人が多いチェコでは、日本と比べ、クリスマスが特別な日だと改めて気づかされました。

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