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留学記:St. Lawrence College

2019年04月09日NEWS

4月に入り、新学期がはじまりました。世界教養学科の一期生が3月に卒業し、それぞれ社会人としての歩みをはじめました。一期生の卒業は、2015年に創設された世界教養学科にとって、ひとつの大きな区切りです。その区切りとともに、この4月から、世界教養学部が始動します。世界教養学科の新しい1ページがはじまります。そうした新しいページを飾るにふさわしい、素晴らしい内容の留学記をお届けします。

留学記を書いてくれたのは、学科二期生の戸村結さんです。戸村さんは、2017年の秋から2018年にかけて、カナダ・オンタリオ州のキングストンにあるセント・ローレンス・カレッジ(St. Lawrence College)に留学しました。セント・ローレンス・カレッジは、社会人や留学生に職業訓練などの実践的な教育を提供する「コミュニティ・カレッジ」です。日本には「コミュニティ・カレッジ」という制度がないため、ピンとこないかもしれません。戸村さんの体験談を通して、「コミュニティ・カレッジ」での教育の素晴らしさにふれてみてください。

なお、戸村さんをはじめ、名古屋外国語大学の留学生が、留学先での経験を「留学人のブログ」で発信しています。興味があるひとは、ぜひ、「留学人のブログ」をのぞいてみてください。アドレスは、つぎのとおりです。
http://nufsblog.com/


留学記
―St. Lawrence College

Kingston

留学先は、カナダのオンタリオ州にあるキングストンでした。大都市トロントと首都オタワの間に位置し、過去にカナダの首都であったことを物語るかのように、歴史的建造物が多い街です。比較的小さな街ですが、街の中心部であるダウンタウンでは、世界の文化を体験できるイベントが開催されたり、世界各国の料理が食べられるレストランがあるなど、国際色豊かです。季節毎に様々なイベントも行われるので、日本では体験できないイベントを楽しむことができます。キングストン内では公共交通機関はバスのみですが、バスの路線数が27と多いので、車を持っていなくても移動に便利でした。

St. Lawrence College

私が留学していたセント・ローレンス・カレッジは、2017年に創立50周年を迎えた比較的新しい学校です。キャンパス自体は広くありませんが、新しい設備やラウンジが導入されたりと、学生同士が気軽に交流したり快適に勉強できる環境が整っています。"university"ではなく"college"なので、ビジネス・エステティシャン・エンジニアリング・カリナリー(調理補助)などの専門的且つ実践的なプログラムが多く、学生層は高校卒業後に進学した学生から、一度就職した後さらに専門的なスキルを磨くために入学した社会人学生まで様々でした。また、世界中の協定校から留学生を受け入れているため、構内では様々な国出身の学生たちとも出会えますし、定期的にセント・ローレンス・カレッジの国際交流部が主催する留学生対象のイベントや日帰り旅行で交流する機会もありました。

ESL

留学生活の前半4ヵ月(9月~1月上旬)をESL(English as a Second Language)という英語を学ぶプログラムで過ごしたので、カナダ以外の国出身の学生と深く交流することができました。留学生活が始まって間もない8月末にプレイスメント・テスト(クラス分け試験)を受け、その結果からレベル別にクラスが決まりました(レベルが高い順にAdvanced class [上級クラス]、Intermediate class [中級クラス]、Pre-intermediate class [初級クラス])。私は、正規プログラムを受講するための英語力を養うAdvanced classに所属することになりました。同じクラスには、家事の合間をぬって通うお母さんたち、キングストンの市民権を持つ社会人など、幅広い年齢層の学生が集まっていました(私のような大学2年生が最年少でした)。そうしたお母さんや社会人は、留学生ではなく移民としてキングストンで生活してきた経験をもつ方々のため一定の英語力を備えており、最初は彼らについていくのがやっとでしたが、時間が経つにつれて徐々に慣れていきました。最後の授業では、担当の先生方に頑張りを褒めていただけました。

Business Fundamentals

留学生活の後半(1月中旬~4月)をSchool of Business [ビジネス学部]所属のBusiness Fundamentals [ビジネス基礎]というプログラムで過ごしました。私はこれまで、全くと言って良い程ビジネスについて勉強したことがなかったので、専門的な内容ではなく基礎からカナダのビジネスを学びたいと思い、このプログラムを専攻しました。授業はビジネス基礎全般に関する内容であっため、School of Businessに所属する他のプログラムの学生とも合同で授業を受けていました。特に印象に残っている授業はIntroduction to Canadian Business[カナダビジネス入門]という授業です。文字通りカナダのビジネスについて学ぶ授業で、教科書に出てくる例は、全て、実際にカナダに馴染みのある企業やCEOでした。最後にグループプレゼンテーションを行ったのですが、私たちの班のテーマはHuman Resources [人事]についてで、特に「ジョン・S・チェンはブラックベリーを死守することができるかどうか」でした。日本出身の私は、カナダに本社を置くスマートフォン大手のブラックベリーを含め、カナダで有名な企業やCEOをほとんど知りませんでした。同じグループのカナダ出身の学生から、ブラックベリーの概要、現在の状況に至るまでの背景や評判について、詳しく教えてもらうところからスタートしました。実際のプレゼンテーションでは、ブラックベリーの現状と問題点を指摘し、同業他社に見られた類似のケースを分析した後、人事体制に関する面から、ブラックベリーに対する改善点を提案しました。このように知らないことが多い中でも学部生や他の留学生と助け合いながら、無事に4ヵ月を乗り切ることができました。

ホームステイ先・ホストファミリー

私はセント・ローレンス・カレッジからバスと徒歩で30分ほどの場所にホームステイしていました。近くに3路線のバス停とショッピングモールがあり、とても便利な場所でした。私のホストファミリーはカナダ出身の独身女性だったのですが、30代前半だったので、ホストマザーというよりは、年の離れた「ホストシスター」のような存在でした。留学生活の前半は、カリブ海の東端に位置するバルバドス出身のハウスメイトもいました。ホストマザーと私たちとの間でルールを決めており、それに従えば比較的自由でした。例えば、自由にキッチンを使用しても良かったので、同じ大学でカリナリーを専攻していたハウスメイトに料理をふるまってもらう機会もありました。ホームステイをしていると、「ホストファミリーとの時間に縛られる」といった場合も考えられます。私の場合は、主に休日や長期休暇でホストマザーと彼女の家族と一緒に過ごす時間もあれば、平日に自由に友達と出かけたり、しっかり自分の時間ももつことができました。ざっくり言うと、ホームステイと学生寮の中間といったところでしょうか。私にとってはとても良かったです。

宗教に対する偏見

私が仲良くなった友達の1人は、バプテスト教会に通うキリスト教徒でした。彼女に誘われ日曜礼拝に参加したことがきっかけで、私の中のキリスト教のイメージが大きく変わりました。礼拝では、まるでポップミュージックであるかのような歌を全員で歌い、聖書の一節を読み、礼拝の後は全員で軽食を挟みながら交流する時間がありました。その後、聖書の勉強会にも参加するようになり、キリスト教とは何なのか、聖書とは何なのかを学ぶようになりました。日本で生活していると、メディアの影響もあってか、「宗教=怪しい、危険」と考える人もいるかと思います。私もその1人で、宗教について学ぶ機会がなく無知であったため、勝手にそう考えていました。しかし、実際は違いました。私が出会ったクリスチャン達は皆優しく、クリスチャンではない私を無理に勧誘することもなく、受け入れてくれました。メディアや人から教えてもらったことを鵜呑みにしてはいけないと再認識しました。

自分を再認識

私にとって留学は、自分が無知であることを再認識させてくれるものだったと思います。実は、中学3年生の時に、海外研修でカルガリーというカナダの別の都市に約3週間滞在したのですが、初めての海外でおどおどしていたのを覚えています。それは、海外が実際にどのような環境であるのか分からなかったからです。今回の長期留学では、飛び込んだ授業で周りに圧倒される経験や、勝手な偏見を持っていたと知る経験を通して、海外の社会環境を具体的に理解することで、自分が無知であったことに気づきました。これらは全て、私にとって、日本で生活しているだけでは経験できなかったことです。このように、留学は、日本では普段経験しないことを経験し、体系的に理解することができるだけでなく、自分に足りないものを知ることができる良い機会です。もちろん、英語力の向上も留学の目的として挙げられますが、英語を勉強するだけならNUFSに居ながらでもできます。皆さんが語学・学部留学する際には、語学力だけでなく、是非その他の目的を明確にし、その先を見据えてみてください。


留学先のセント・ローレンス・カレッジです。Collegeなので小さい学校です。雪が積もっていることからもわかる通り、冬に撮影しました。私が体験したキングストンでの最低気温は、氷点下30度(体感温度氷点下37度)でした! カナダの冬、侮るなかれ。

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留学中にお世話になったTim Hortonsのdouble double coffeeです。授業の合間の眠気覚ましや授業後の勉強のお供に大活躍していました。これさえ飲めば、皆さんもカナディアンです。

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11月~4月まで約半年間通っていたFirst Baptist Churchです。キングストンのダウンタウンにある、古い教会です。毎週の日曜礼拝でバプテスト派について学んでいました。

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キングストンのダウンタウンには、市庁舎前にこのようなモニュメントがあります。是非 I(アイ)になってみてください!

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ホームステイ先の近所にあるスーパー前に置かれていたピクニックテーブルです。テーブルに書かれている「O Canada」とは、カナダの国歌のことです。スーパーでも愛国心を感じました。

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